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創業75年。川辺仏壇の4つの製造工程を自社工場で行う「大阪屋仏壇店」

祖父母の家に行ったとき、和室や仏間にあるお仏壇に手を合わせた経験がある方も多いのではないでしょうか。

お仏壇とは、本尊である仏様をお祀りし、礼拝するための祭壇のことです。宗派によって、ご本尊は異なります。たとえば真言宗では「大日如来様」、浄土宗や浄土真宗本願寺派では「阿弥陀如来様」をお祀りします。お仏壇は、家の中にある小さなお寺のような存在であり、ご先祖様を供養する場でもあります。

南九州市川辺町には、「川辺仏壇」という全国的に高い技術評価を受けている伝統工芸品があります。最盛期には、個人経営を含む会社が250社以上あったとされていますが、現在は職人の高齢化やお仏壇の需要の減少により、会社の数が少なくなってきました。

この伝統を守り、川辺仏壇の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいという思いから、「大阪屋仏壇店」に取材をさせていただきました。川辺仏壇ならではの特徴や魅力について、詳しくお話を伺いました。

白木に漆を塗り、金箔や金粉を施した「金仏壇」で有名な川辺仏壇

川辺町周辺は、古くから仏教信仰が強い地域だったそう。12世紀初期には、川辺町でお仏壇が作られていたと言われています。お仏壇は「金仏壇」と「唐木仏壇」「モダン仏壇(家具調仏壇)」の3種類に大きく分けられます。川辺町で作られるお仏壇は、金仏壇です。

お話をお伺いした大阪屋仏壇店では、川辺仏壇の製造・卸・販売・修復をしています。創業75年という歴史ある仏壇店です。

川辺仏壇の製造工程は、「木地」「彫刻」「宮殿」「金具」「塗り」「蒔絵」「箔・仕上げ」の7つの工程があります。それぞれの工程は、完全分業で製造されています。大阪屋仏壇店では、「木地」「塗り」「蒔絵」「箔・仕上げ」の4つの工程を、自社工場内で製造しています。30名以上の職人が各部門の技術を活かし、お仏壇を作っています。

仏壇ができるまでの工程紹介〜「木地」編〜

工場内の見学をさせていただきました。最初に見学をしたのは、「木地」作りの工程です。

こちらの写真は、お仏壇のパーツの一部です。大阪屋仏壇店で働いている木地職人が、木材加工し造っています。国産の木材を使用しているので、壊れにくく長持ちしやすいという特徴があります。

注文が入ってからゼロから作ると2〜3か月は製造にかかってしまうため、パーツはある程度作り置きをしているそう。注文をいただいて1か月半ほどでお渡しができるようにと、このような工夫をされています。注文が入ってから、木地職人が、釘を使わずに加工した木材で、仏壇の本体を仮組みをします。

木材は時間が経つと水分が抜け、乾燥して細くなってしまいます。こちらの写真は、「塗り」をした時に、木の繋ぎ目がわからないようにと和紙を貼っている場面です。「塗り」の作業をする前に、このような手間暇をかけることで、より品質のよいお仏壇が仕上がります。

仏壇ができるまでの工程紹介〜「塗り」編〜

こちらは「塗り」の工程。写真は、下地塗装が施されたパーツです。上塗りに入る前に、下地塗装を3回以上行うことで、頑丈な塗膜の地盤を作ります。

こちらは、彫刻部分に金箔を押すための「下地塗り」をしたパーツです。金箔の光沢をより引き出すために、あらかじめ黄色の塗料を塗る場合があります。

大阪屋仏壇店では、彫刻は専門の彫り師に依頼しています。手間と時間のかかる作業だからこそ、信頼できる職人との連携が欠かせません。

下地塗装の後の研磨(けんま)作業の様子です。研磨とは、表面を滑らかに整えるために、表面を研ぎ、磨く工程を指します。小さな傷やくぼみが残っていると、製品全体の品質が損なわれてしまうため、研磨はとても重要な工程です。

この工程では、力の加減がとても重要です。力を入れすぎると、素材が折れてしまったり、表面に凹凸ができてしまったりします。そのため、微妙な匙加減が求められる、まさに熟練の技なのです。長年の経験を積んだ職人は、指先の感覚だけでわずかな欠けや不具合がわかると言います。まさに「職人技」の真骨頂です。

仏壇ができるまでの工程紹介〜「蒔絵」「金箔押し」編〜

漆で絵柄を描き、その漆が乾ききらないうちに、金や銀などの金属の粉や朱・黄・緑などの色粉を付着させて文様を描いたものを「蒔絵」と言います。蒔絵職人は、ひとつひとつ手作業で描いています。時には、漆を何層も重ねて立体感を出したりと、あらゆる技法を駆使して、描かれています。大阪屋仏壇店には、蒔絵職人が2人います。

こちらは、金仏壇ならではの「金箔押し」の工程です。一定期間乾燥した塗装部分に、金箔を押していきます。金箔はペラペラしているため、狙った所にズレることなく貼るのは至難の業。万が一、貼る場所がズレてしまったり、ヨレてしまった場合、すべて拭き取って最初から貼り直しになるそうです。まさに緊張感のある作業ですね。

また、綺麗な仕上がりになるように、金箔を押さない部分にマスキングテープであらかじめ養生して、箔押し液を吹き掛ける時に汚れないようにするなどの工夫をしています。

金箔を貼り終わり、部材がそろったら組み立てをします。そして、お仏壇の完成です。7つのすべての工程をご紹介することはできませんでしたが、それぞれの工程の職人の手間暇がかかった丁寧な手作業があるからこその川辺仏壇です。

わたし達がこの世に生を受けたのは、ご先祖さまが命をつないでくれたからこそです。お仏壇に手を合わせることは、仏さまやご先祖さまへの感謝を伝える行為であり、故人を思い出し、心を通わせる大切な時間でもあります。

時代とともに、お仏壇のあり方も変化してきました。変わることが必要な場面もあれば、変わらずに守るべき大切な心もあります。今の暮らしに合った形であっても、「手を合わせる」という行為の本質は変わりません。お仏壇が持つ役割と、その大切さに、少しでも気づいていただけたら幸いです。

大阪屋仏壇店では、4つの主要な製造工程を自社工場で一貫して行っているため、お客様のご要望に沿ったオーダーメイドの仏壇制作が可能です。サイズや蒔絵のデザインなど、細かなご希望にも柔軟に対応できることが強みです。金仏壇以外の商品も取り扱っており、修理やご相談にも対応しています。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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投稿者プロフィール

上村 ゆい
上村 ゆいヨガインストラクター×フリーライター
ヨガインストラクター×ライター。どちらかというと身体が硬めのヨガインストラクターです。その人に合ったレッスン内容を心がけているので、老若男女問わずレッスンを受けていただいています。ヨガレッスンは、出張ヨガがメイン。趣味は、美味しいものを食べること。ライターとして鹿児島のいろいろなことをを発信していけたらと思います。