わたしたちの生活の中には様々な「香り」が存在します。食べ物、花、など。それそのものが香るものもあれば、雨の日や森林、陽だまりのようにその場でそっと感じるような香りもあります。そしてその香りは、わたしたちが生まれるずっとずっと前から存在し、時代や人の暮らしとともに、静かに受け継がれてきました。
今回は薩摩の地で香道と向き合う香司 菟道竈門(とどうかまど)の堀之内夕子先生にお話しを聞いてきました。
11月下旬に開催された【五感で味わう親子文化体験】の様子と共にご紹介いたします◎
香道とは
茶道、華道に並ぶ日本の伝統文化です。
奈良時代、鑑真和上が多くの香薬材、漢薬材を持ち込み薫物を伝えたとされています。この薫物は、貴族の趣味として確立し「薫物(たきもの)」遊び(薫物合わせなど)を経て発展しました。
香道では、香りを「嗅ぐ」と表現せずに、心を澄ませて深く味わうことを「聞く」と言います。
これを「聞香(もんこう)」といい、香りを鑑賞するとき、その奥にある情景や季節、そして時の流れまでも感じ取っていきます。
正解や評価を求めるものではなく、立ちのぼる香にそっと身を委ね、それぞれの心に浮かぶものを大切にする——それが聞香の時間です。

いかがでしょうか?ちょっと小難しく感じてしまいましたか?香道は、礼儀作法・立居振舞など約束事の多い世界でありますが、原点は何よりも、香りそのものを楽しむことにある。そう教えてくれたのが菟道竈門の堀之内夕子先生です!
菟道竈門(とどうかまど) 【香司 堀之内夕子】
堀之内夕子先生は、鹿児島を拠点に「香り」を学び、感じ、そして日々の暮らしへとそっと取り入れる活動を続けていらっしゃいます。
格式高く、どこか敷居の高いものと思われがちな香道を、もっと身近に、もっとナチュラルに感じてほしい——そんな想いを胸に、一つひとつの時間を大切に紡いでいます。
香道は、遠い昔から受け継がれてきた伝統文化であると同時に、今日の暮らしの延長線上に静かに息づくもの。堀之内夕子先生は、香りを通して、わたしたちが無理なくその世界へと足を踏み入れられる、やさしい入口をそっと示してくれています。

香司 堀之内夕子
(菟道竈門とどうかまど主宰) Profile (内容はHPより抜粋)
現在、高千穂神社の御神木を香材として使用することを唯一許可された香司であり、調香師。
鹿児島を拠点に、香りの力と文化の魅力を融合させた活動を行っています。
専門家や多様な分野とのコラボレーションを通して、香大国「薩摩(鹿児島)」が持つ奥深い香りの世界と、日本の伝統美、そして“ひと息つく喜び”をお届けしています。
香りの知識を、子どもから大人まで幅広くわかりやすく伝えることで、日本のみならず海外にも香り文化を発信中。
【主な活動・資格】
・早稲田大学 WBS お香講師
・志野流香道
・菟道竈門 香司
・資生堂プロフェッショナル アドバンスコース修了
・ラ メゾン ド ボーテ カリタ FaceCare・BodyCare ディプロマ取得
・資生堂 BA21 修了
・スパイスインストラクター(JIA 公認)
・スパイス香辛料アドバイザー(JSFCA 認定)
・幼稚園教諭免許
・小学校教諭一種免許
・高千穂神社御神木による香守りの製作を許可された唯一の香司
・一般社団法人 薩摩文化普及の会 代表理事
・食品安全衛生管理士
・医療事務
HP//https://kaorinokamado.jp/
Instagram//
https://www.instagram.com/kaorinokamado?igsh=ajNxZ3VwMHd0bWJh&utm_source=qr
親子文化体験講座
去る11月29日、鹿児島市の黎明館お茶室【楠芳亭】にて『薩摩香と呈茶を体験しよう』の親子文化体験講座を取材させていただきました。
参加しているのは、鹿児島市の大瀧小学校「大瀧土曜クラブ」小学1年生~6年生の親子です。


茶室を開けると、

香道に関するお勉強から始めるのではなく、「まずは、甘いものでも食べて美味しいお茶を一服どうぞ」と和やかにはじまります。かしこまらずに、この環境と先生に馴染んでいくような空気感を感じました。

見た目も可愛くて、甘くて美味しい生菓子。丁寧に点てられたお抹茶を味わう時間に心がほどけていくようでした!楽しむことが大前提ですが、先生から行為や所作の作法も教えていただきました。

続いて、「香」に関する講和を拝聴いたします。難しい話ではなく、日常に存在する「香り」の感じ方を言語化します。
香りを色で表現してみたり、感じた香りを強弱で比較し、それを自分の中に落とし込んでいきます。
改めて、香りを「数字で表すと?」「色で表すと?」と考えると自分の中の基準を探ることにもなるし、また自分以外の人がどのように感じているのかを知るきっかけにもなります。(こういう実践的な学び、子どものころに体験したかったなあ…)


続いて、いよいよ「聞香(もんこう)」の時間です。香道のお道具を真近で見て、触らせてもらいました。
このようなお道具はお金を出せば買えるというものではなく、人から人へ大切に受け継がれてきた貴重なもの。
子どもたちも、自然と丁寧に扱っているのが印象的でした。


火道具(ひどうぐ)の中から一部をご紹介。
火取火箸も、火取香炉も、細やかな美しい絵柄が描かれていますね。火取香炉は四季が一周に描かれていました。

火を使わずに電気で、火取香炉の代わりになるお道具がこちら。
実際の聞香(もんこう)も、この電気香炉を使用し「白檀(びゃくだん)」「沈香(じんこう)」の2種類の香木を聞かせていただきました。
甘い、酸っぱい、苦い、など。感じ方は人によって少しずつ異なり、そこに正解や間違いはありません。ただ浮かんだ言葉や印象をそのまま差し出すことで、香りの世界はより豊かに広がっていきます。

初めてみるお道具や聞香(もんこう)の作法ですが、先生の優しく穏やかな声色のおかげで自然と香りの世界に馴染んでいくのを感じました。私自身もですが、子供たちもとても穏やかな時間を過ごしていてこの瞬間、この場が一体となって香りを楽しんでいるのがとても心地よかった!
さあ、香道の世界、覗いてみたくなってきませんか?
堀之内先生から、一般の方でも気軽に参加できる香りの催しを教えて頂きました!
①新春ことほぎの会

日時:1月11日(日)
午前調香 AM10:30 ~
午後聞香 PM13:00~
場所:
内容:午前中は初めての方でも呈茶〈お薄と主菓子を召し上がっていただく〉でリラックスしてお持ち帰りいただく雅な調香体験。午後は「ことほぎ 鶴亀」に合わせた聞香体験を行います。
薩摩香と柔らかな味をゆっくり楽しむならばこちらへ。
参加費:一日(午前、午後)/8,000円(※この価格は3月までの金額)
午後、聞香(もんこう)のみ/3,500円

この会では新春のお祝い菓子である、花びら餅で一服楽しめるそうですよ♡
➁士風文化梅の宴

日時:2月21日(土)14:00~
場所:
内容:薩摩琵琶一節切〈ひとよぎり〉の鑑賞 および 薩摩香〈梅香〉を楽しみます。
菟道竈門香司 堀之内夕子が厳選した香木を聞香スタイルでお聞きいただける小さなサロン。
ゲストの皆様が楽しく心静かに香りでくつろぐひとときをご用意いたします。
初めての方も、どうぞお気軽にご参加くださいませ。〈お洋服でどうぞ〉

まずは鑑賞してみたい方はこちらに!
後記および堀之内先生からのメッセージ
香道というと、何か難しいことを学び、型を身につけていくお稽古のような印象を抱いていました。けれど今回の取材を通して堀之内先生のお話に耳を傾けるうちに、そのイメージは静かにほどけていきました。
香道は、何かを「学び取る」ための時間というよりも、ただ香りを感じることを自分に許し、そのひとときを共に味わうためのものなのかもしれません。そこに正解や間違いはなく、上手に言葉にできなくてもいい。甘い、懐かしい、どこか切ない——思い思いに浮かんだ感覚を、そのまま大切にすればいいのかな、と。
香りに心を澄ませ、自分の内側にそっと現れる気配に耳を傾ける。その静かな姿勢そのものが、香道の持つ最大の魅力なのだと、今回の体験を通して感じました!
また、堀之内先生の朗らかでお優しい人柄に大変癒され…取材後も先生のお声を思い出しては余韻に浸っているほどでした。鹿児島にこんなに素敵な香司がいるのだと、多くの方に知ってもらいたいです◎
以下、堀之内先生からメッセージ

香十徳という考え方は曹洞宗禅の一休さんが、わかりやすく説くために伝えたものです。
柔らかく愛らしい自身と他者を慈しむ。それ以上を受け取らずにも良い。などなど
心地よい香りと温かさを味わうひとときをご一緒に楽しんでいただけると嬉しいです。
今後も、鹿児島市内だけではなく県内の方々にお伝えしていきたいです。
取材協力・一部写真提供
菟道竈門(とどうかまど)
香司 堀之内夕子
specialthanks!
