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南日本新聞で紹介した本のまとめ(前編)

下豊留です。
2020年4月~南日本新聞の書評委員をしていました。
今月掲載された本が最後の書評となりましたので、今まで紹介した本をまとめます!
全部で24冊ありますので、前編・後編に分けてご紹介します。

安川周作『語られた歴史 島津斉彬』南方新社
鹿児島の偉人といえば、照国神社にまつられている第11代薩摩藩主の島津斉彬公を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
なぜ誰もが名君と評するのか、どうやって数々の偉業を成し遂げたのか、改めて考えさせられる1冊です。
著者ならではの視点で、斉彬の人材育成やマネジメント術に着目をしているところが面白く、自己啓発本としても楽しめると思います。

アーネスト・メイスン・サトウ『一外交官の見た明治維新』講談社
1921年にロンドンで出版されたアーネスト・サトウの回顧録の新訳(鈴木悠訳)です。
坂田精一訳の岩波文庫版刊行から60年の時を経て、外交史研究を踏まえ翻訳されています。
より原文を読み手に示しているため、岩波版を読まれた方もぜひ手にとっていただきたいです。

福田千鶴『女と男の大奥』吉川弘文館
小説やドラマで、しばしば愛憎劇の舞台として描かれる江戸城大奥は「女の園」「閉鎖的」というイメージが強いですが、一体どんな場所であったのでしょうか?
大奥における女性と男性の役割について研究の基本に位置する「大奥法度」を丁寧に読み解くことで、実態を明らかにされています。

清武英利『後列のひと』文芸春秋
著者は、目立たぬところで人や組織を支える人を後列の人と呼び、18人の物語を紹介しています。
鹿児島が舞台の物語として、太平洋戦争末期に特攻隊員の宿舎となった南さつま市の「飛龍荘」が取り上げられています。
心を打つ言葉がいっぱいです。

伊東潤『琉球警察』角川春樹事務所
太平洋戦争後、米軍占領下の沖縄に設置された「琉球警察」が物語の舞台です。
主人公は、奄美群島徳之島出身の東貞吉。沖縄の警察学校に入りますが、奄美出身は「シマンチュ(奄美人)」と呼ばれ「ウチナンチュ(沖縄人)」とは区別され、ときに差別的な待遇を受けていました。
これまでの沖縄の苦労だけでなく、現代が抱える問題にも目を向けるきっかけになるような小説です。

鈴木正義『もし幕末に広報がいたら』日経BP
事の顛末が分かっている歴史上の出来事をもとに、逆算してベストな報道発表資料を考えるという事例を紹介しています。
情報発信の仕方を考えるビジネス本でありながら、歴史にも楽しく触れられるという何とも一石二鳥な本です。

桐野作人『曙の獅子』南方新社
薩英戦争編・大政奉還編があります。
主人公は与力の相良金次郎、与力の出ながら野太刀自顕流の使い手で、小松帯刀の家来としてとり立てられます。
小松がもう少し長く生きていれば世の中どうなっていたのか、今の世の中を小松が見たらなんと思うのだろうかと考えずにはいられなくなりました。

遠藤由紀子『会津藩家老・山川家の近代』雄山閣
会津藩の家老、山川家には幕末に7人のきょうだいがいました。
長女・二葉、長男・浩、次女・ミワ、三女・操、次男・健次郎、四女・常盤、五女・捨松です。
文献や聞き取り調査をもとに、各人物の足跡を明らかにしています。

水本邦彦『土砂留め奉行』吉川弘文館
副題は「河川災害から地域を守る」です。
土砂留め奉行とは、第5代将軍徳川綱吉の時代に始まった広域土木行政を担う武士のこと。
先人たちのたゆまぬ努力によって、災害対策が進歩してきたということが分かります。私たちも後世のために自然を守らなければならないと考えさせられました。

市原麻里子『安土の日蝕』里文出版
織田信長が討たれた本能寺の変の前日は、日本で日食が起きた日でした。
著者は、天正10年の「具注暦」に、日食について明記されていることに目をつけられました。
主人公の加茂在昌が予測したと思われる「具注暦」を用いながら、暦道を軸に展開する歴史小説です。

小島英俊『旅する漱石と近代交通』平凡社出版
明治5年、新橋―横浜間に日本で初めて鉄道が開通しました。
開通したばかりの時期でも、鉄道旅は楽しまれており中には「坊ちゃん」でおなじみの作家・夏目漱石もその1人でした。
漱石と鉄道史を結び付け、漱石の一生と近代交通の発展を一緒に追うことができます。

戸田義長『虹の涯』東京創元社
徳川斉昭に仕え、尊王攘夷思想で幕末志士らに強い影響を与えた藤田東湖の息子・小四郎が主人公の、歴史推理小説です。
「天地揺らぐ」「蔵の中」「分かれ道」「幾山河」の4編からなり、各話読み切りで楽しむこともできますが、前編を通して読むと、登場人物の関係性や心の葛藤、成長に触れ、より腑に落ちる結末へと導いてくれます。

以上、12冊ご紹介でした!

後編はこちら↓

投稿者プロフィール

下豊留 佳奈
下豊留 佳奈
オフィスいろは
下豊留佳奈(しもとよどめ かな)
鹿児島生まれの鹿児島育ち。
地元が元気になればと思いあれこれ活動しています。
共著に『鹿児島偉人カルタ55』(燦燦舎)
2021かごしまの新特産品コンクールで鹿児島県観光連盟会長賞を受賞しました。
第一工科大学非常勤講師
昔話と歩くことが好きです。