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南日本新聞で紹介した本のまとめ(後編)

下豊留です。
2020年4月~南日本新聞の書評委員をしていました。
先月掲載された本が最後の書評となりましたので、今まで紹介した本をまとめます!
全部で24冊ありますので、前編・後編に分けてご紹介します。

こちらは後編です。
前編はこちら↓

石井洋二郎『東京大学の式辞』新潮新書
東京大学の歴代総長が、入学式や卒業式で学生に送った式辞を紹介しています。
時代背景や出来事と関連付けながら読み解いており、式辞を通した近現代史書のようです。
東京大学のホームページでは近年の「式辞・告辞・祝辞集」が公開されているため、見比べてみるのも面白いです。

金澤裕之『幕府海軍』中公新書
幕末、安政2(1855)年から13年間存在した幕府創設の近代海軍組織「幕府海軍」について、海上自衛隊で長年の勤務経験がある著者が、独自の視点で紐解いています。
ペリー来航から西南戦争まで、海軍を通して明治維新を振り返ることができる一冊です。

石井妙子『近代おんな列伝』文藝春秋
明治から昭和を逞しく生きた女性37人の人生を紹介しています。
偉人の妻、天皇家に仕えた女性、ジャーナリスト、女優、女性作家など多様な人選です。
近代国家を形成する激動の時代を生きた女性をふり返ることで、現代を生きるヒントを得られると思います。

町田明広 編『幕末維新史への招待』山川出版社
幕末はいつからはじまるのか、なぜ「鎖国」を「海禁」とよぶようになったのか、といような幕末維新史の「なぜ?」を、第一線で活躍する研究者22名が紹介しています。
発売直後から反響が大きかった歴史書です。もちろん、薩摩藩のことも書かれていますよ!

小泉武夫『発酵食品と戦争』文春新書
醸造学・発酵学の第一人者の著者が、戦時下で「発酵」がどのように活用されていたか、具体例をもとに紹介しています。
豊臣秀吉の時代からロシアのウクライナ侵攻まで、世界の幅広い時代を取り上げています。
また、タイトルは『発酵食品と戦争』となっていますが、爆薬や抗生物質など食品以外の事例も紹介されていて面白いです。

一坂太郎『暗殺の日本近現代史』青志社
幕末維新期から安倍晋三元首相銃撃事件までの暗殺事件について、秘蔵写真とともに紹介されています。暗殺に関する通史ともいえる1冊です。
有村次左衛門、大久保利通、森有礼など、鹿児島ゆかりの人物も登場します。
暗殺事件を振り返ることで、これからの社会を考えるきっかけにして欲しいなと思います。

クァク・ミンジ『私の結婚について勝手に語らないでください。』亜紀書房
2021年に韓国で出版された、非婚主義者の生き方を紹介するエッセイ『いや、今どき誰が』の翻訳本です(清水知佐子訳)。
著者は、非婚主義者であることを宣言し、非婚ライフを発信するポッドキャスト(音声配信サービス)「ビホンセ(非婚世)」の制作兼進行役を務める放送作家です。

藤民央『重野安繹伝』鳥影社
重野安繹は、幕末から明治期に活躍した薩摩出身の漢学者・歴史家です。
日本初の文学博士としての経歴に焦点が当たりがちな人物ですが、本書では特に、奄美大島での生活を丹念に描いています。
長年、奄美の歴史と民俗を研究されている著者ならではの視点で面白いです。

安川周作『日本の産業革命遺産と薩摩』南方新社
近代化を目指した背景からその後までを丁寧に説明した、まさに「産業遺産の入門書」といえる本です。日本全体の流れと、薩摩での動きがよく分かります。
今年は、明治日本の産業革命遺産が世界遺産に登録されて10年という節目の年ですのでオススメです!

小川原正道『西郷従道』中公新書
西郷隆盛が「大西郷」と呼ばれるのに対し、「小西郷」と称された弟の西郷従道の伝記です。
まとまった資料が現存しないなか、広範囲に分散している資料を丹念に調査されています。
本書を読み、もっと再評価されるべき人物だなと思いました。

五味文彦『島津氏と薩摩藩の歴史』吉川弘文館
鹿児島の中世から近代の政治・文化・社会の動きを、通史的分析で明らかにした1冊です。
島津氏が権力を形成していく過程や、明治維新を成し遂げた志士たちを育んできた薩摩藩の土壌など、約800年という長期的かつ広い視点で学ぶことができます。

植松三十里『侍たちの沃野』集英社文庫
副題は「大久保利通最後の夢」です。
猪苗代湖の水を郡山へ送るという大久保が成し遂げたかった大プロジェクトについて、史実をもとに丹念に描かれた歴史小説で、物語の中心人物は、日本三大疎水の父と呼ばれる南一郎平です。
安積開拓は日本の土木事業の規範になるという大久保の遺志は、疎水に関わる多くの人々に受け継がれていきました。

以上、12冊ご紹介でした。

投稿者プロフィール

下豊留 佳奈
下豊留 佳奈
オフィスいろは
下豊留佳奈(しもとよどめ かな)
鹿児島生まれの鹿児島育ち。
地元が元気になればと思いあれこれ活動しています。
共著に『鹿児島偉人カルタ55』(燦燦舎)
2021かごしまの新特産品コンクールで鹿児島県観光連盟会長賞を受賞しました。
第一工科大学非常勤講師
昔話と歩くことが好きです。