サシバとは

belvedere04 による作品”grey-faced buzzard” は、 CC BY 4.0ライセンスの下で提供されています。
サシバという鳥をご存じでしょうか。
「ピックイー」という独特な鳴き声のタカの仲間で、奄美大島では10月ごろになると良く耳にするようになります。
個体数の減少から絶滅危惧II類に指定されており、春に日本や中国などで繁殖を行い、秋には東南アジアやフィリピンで越冬する”渡り”を行う鳥です。
下の画像の紫色が繁殖地、オレンジ色が越冬地です。

NordNordWest Range data: BirdLife International. 2016. Butastur indicus. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T22695726A93525673. による作品”Butastur indicus distribution map” は、 CC BY-SA 3.0ライセンスの下で提供されています。
サシバと奄美大島
実は奄美大島では越冬のために例年2000羽以上のサシバが渡ってきている事が確認されています。
そのため奄美大島が国内最大の越冬地とも言われています。
奄美大島を越冬地として選ぶサシバは4月ごろから繁殖のため本州へ渡り、10月ごろまた越冬のため奄美大島に戻ってきます。
これは日本鳥類保護連盟が行っているGPS追跡調査で明らかになっており、奄美大島でGPSを付けた22羽の個体は全て国内移動をしていました。
【第三弾】絶滅危惧種サシバの保全を皆の手で。渡りの全容解明への挑戦(日本鳥類保護連盟 2025/09/16 公開) – クラウドファンディング READYFOR
https://readyfor.jp/projects/jspb2025
こちらの”活動報告”にて確認できます。
春の渡りでは、奄美大島~鹿児島~宮崎~大分~四国~大阪とどの個体もほぼ同じルートを通り、繁殖地である関東・東北地方に散らばっていることが分かります。
越冬のための秋の渡りでもほぼ同じルートで帰ってくるのが面白い所ですね。
越冬地・中継地・繁殖地はたまたまではなく選ばれた重要な場所であることが伺えます。
国際サシバサミット

2025年10月25日、26日に5回目となる国際サシバサミット2025が奄美大島宇検村で開催されました。
以前フィリピン・ルソン島北部では年間5000羽以上ものサシバの密猟が行われていました。そこでアジア猛禽類ネットワークや様々な組織を中心に地元大学や警察などが連携し「密猟根絶プロジェクト」を立ち上げ、2018年には完全に密猟を無くす事に成功しました。
これをきっかけにサシバの繁殖地・中継地・越冬地を繋いでそれぞれの地域の自然や文化を守る国際的な取り組みとしてサシバサミットが始まりました。
宇検村でのサシバサミット

サミットは「サシバはなぜ奄美大島を越冬地として選ぶのか?」という基調講演に始まり、各国の活動報告、奄美の小中高校生による発表、ポスター展示など様々なプログラムで行われました。
かなり開かれたサミットで来場者も多く、特に2日目の「サシバの鳴きまねコンテスト」は子供も大人も全力のピックイーで会場は大盛り上がりを見せました。

サミットのパンフレットはホームページに、公演はYouTubeにそれぞれアップロードされています。ぜひご覧になってください。
| 国際サシバサミット 2025 宇検村公式HP | https://www.nacsj.or.jp/GFB-SUMMIT/ |
| 「国際サシバサミット2025 宇検村奄美大島」公式チャンネル | www.youtube.com/@国際サシバサミット2025宇検村 |
サシバと奄美の人との関わり
奄美には「ピーちばヒュー」という”サシバが鳴く頃になるとシイラが獲れる”という意味の言葉があります。
また地方の方言でサシバを「チュッピー」と呼ぶ風習もあります。

秋の訪れを告げる鳥として昔から愛されていることが伺えますね。
基調講演では、奄美の自然環境の多様性はサシバにとってかなり生活しやすいものであると触れられていました。
それを維持しつつこれからもサシバの越冬地として選ばれる島であればいいなと思います。

「ピックイー」という特徴的な鳴き声を一度認識すると、どこかで鳴いているとすぐ気付くようになります。
夏場は本州北部で、秋冬には奄美で聴くことができるのでぜひ耳をすませてみてくださいね。

