本を読む人が減っている。大型書店やネット通販の台頭もあり、いま町の本屋さんは苦境に立たされています。
指宿にある米永書店は、長年営業をしていた場所から移転を余儀なくされ、本屋を「やめる」か「続ける」かの岐路に立たされました。葛藤をしながらも、県内外のたくさんの本屋との出会いや地域の人たちの言葉に背中を押されて、3代目店主の米永さんは“本屋を続ける道”を選びました。
「居場所としてのまちの本屋さん」を目指す米永さん。米永書店は、本を販売するだけでなく、店内にコワーキングスペースとシェア型本棚を設けるなどの工夫をされています。再出発を決めた米永書店の歩みについて、米永さんにお話をお伺いしました。
本屋を続けることを選んだ理由──米永書店、移転からの再挑戦
米永書店は昭和初期に創業して以来、指宿市立柳田小学校の近くに店舗を構えていました。木造の店舗は昭和50年頃に鉄筋の建物へと建て替えられ、長らく地域の風景の一部となっていましたが、道路の拡幅工事に伴い、2024年2月に現在の場所へと移転。そして、2024年8月に書店を移転オープンしました。

本を取り巻く環境は年々厳しくなっています。全国に展開する大型書店やコンビニの台頭、そして「本離れ」という時代の流れもあり、移転とともに店を閉じるという考えが米永さんの頭をよぎったそうです。移転後は、教科書や文具を学校に届ける「外商」に専念することを視野に入れていたといいます。
しかし、移転にあたって建てる建物の参考にと、佐賀県鳥栖市にある物流センターを見学しました。そのときに米永さんは、道すがらに本屋も見てまわったそう。そして、福岡県朝倉市甘木にあるカフェ併設の書店との出会いが、大きな転機になりました。「もう少しやってみようかな」と気持ちが動き始め、九州や関東などの有名な書店巡りをし、今後の米永書店の在り方を考えました。さらに、「やり方を変えながら、続ける価値はあるよね」という地域の人の言葉に後押しされ、米永さんは再び本屋を続ける決意を固めました。
選ぶ楽しみ、並べる喜びにつながる。米永書店スタッフがつくる本棚

近くにTSUTAYAがあることから、あえて同じジャンルの本を扱うのではなく、違う切り口のラインナップに挑戦。米永さんは他店舗との競争ではなく、共に地域を盛り上げる「共栄」の道を選びました。本棚選びにもこだわり、米永書店ならではの見せ方という工夫を凝らしました。
写真をご覧いただくと分かるように、店内にはたくさんの本が並んでいます。およそ8,000冊以上ある蔵書のうち、約4割が児童書だそうです。児童書の多くが、米永書店のスタッフによって厳選されたもの。スタッフが好きな作家を10人選び、その作家の作品をすべて揃えるという選書の仕方もしています。「自分たちが心からおすすめした本を、お客さまに手に取ってもらえるのは、何よりの喜びだ」と米永さんはいいます。

カウンターには、スタッフおすすめの本がずらりと並んでいます。よく見ると、それぞれの本には手描きのPOPが添えられていて、一冊一冊に込めた想いが伝わってきます。実際に読んだうえで書かれたコメントだからこそ、温かみがあります。ぜひPOPを参考に、自分にぴったりの一冊を見つけてみてくださいね。
「Book apart こばこ」で広がる、指宿のクリエイティブな輪
米永さんが掲げる「居場所としてのまちの本屋さん」という思いから、店内にはコワーキングスペースとシェア型本棚が設けられています。
このシェア型本棚は、立ち上げ当初からサポートしている「Share Office wacca.」の提案によるもの。「スタートアップ支援の意味でも、指宿にこうしたスペースがあったらいいよね」という、フリーランス仲間との会話がきっかけとなり、実現しました。


このスペース「Book apart こばこ」の利用料は月額2,200円(入会金5,500円)。利用特典として、月に1度、任意の日にワークショップや物販などのイベントを開催することもできます。現在、すべての棚が入居済みとのことです。入居しているのは、ハンドメイド雑貨をはじめ、ヘアケア商品やドリップバッグの飲み比べセット、本枯れ節など、個性豊かでバラエティに富んだ品々。詳しくは、「Book apart こばこ & coworking space knot」のInstagramをご覧ください。
インスタグラム
https://www.instagram.com/cobaco_knot
【トークイベント&読書会の開催】本の感想を“著者本人に”伝える、特別な時間
米永書店では、不定期で読書会などのイベントを開催しています。6月7日(土)には、ライター&エッセイストの佐藤友美さんを招いたトークイベントと読書会が開かれます。

佐藤友美さんは、『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)、『女は、髪と、生きていく』(幻冬舎)、『書く仕事がしたい』(CCCメディアハウス)、『ママはキミと一緒にオトナになる』(小学館)など、数多くの著書を持つ人気のライター&エッセイストです。今年3月に天文館図書館で開催されたトークイベントは、満席となるほどの盛況ぶりでした。

米永書店で開催されるトークイベントでは、仕事や子育て、友達付き合いなど、日々の生活のなかで「大変も幸せもどちらもあるけれど、おおむね幸せ」と感じている佐藤さんが、“ご機嫌に生きるためのヒント”をお話ししてくださいます。働く人、子育て中の人、人間関係に悩んでいる人におすすめの内容です。
読書会では、佐藤さんの著書『ママはキミと一緒にオトナになる』を題材に語り合います。最初の10分間で気になる章を自由に読み、感想や質問を直接、佐藤さんに伝えられる貴重な機会です。著者と直接対話ができる、特別な読書会をぜひ体験してみてください。
※イベントは終了いたしました。
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ワークショップや読書会など、楽しいイベントが盛りだくさん。米永書店のインスタグラムでチェックをして、ぜひ遊びに行かれてくださいね。
ホームページ
https://smappon.jp/jgabahc5
インスタグラム
https://www.instagram.com/yonenagasyoten
投稿者プロフィール

- ヨガインストラクター×フリーライター
- ヨガインストラクター×ライター。どちらかというと身体が硬めのヨガインストラクターです。その人に合ったレッスン内容を心がけているので、老若男女問わずレッスンを受けていただいています。ヨガレッスンは、出張ヨガがメイン。趣味は、美味しいものを食べること。ライターとして鹿児島のいろいろなことをを発信していけたらと思います。
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