ツーリズムとの出会い

スキンダイビングの様子

朝5時、目覚まし時計を止め、軽めの朝食を済ませてダイビングショップへ出勤し、ケアンズシティのホテルへお客さまを順番に迎える。ポートダグラスの港までハイエースを北へ1時間ほど走らせオーストラリアの日帰り最北端のグレートバリアリーフ・エイジンコートリーフのダイビングガイドへ向かう。ポイントへ着くと見渡す限りの海に私たちのボートだけが浮いている。3回のダイビングを楽しみ、心地よい揺れに身を任せて帰路へつく。思えばこのダイビングガイドが「ツーリズム」との関わりの始まりだった。20年以上前の話になるが、当時からオーストラリアクイーンズランド州は「リーフタックス(環境管理税)」が存在しグレートバリアリーフで行うアクティビティには4オーストラリアドル(当時)をお客様からいただいていた。

サステナブルツーリズムへ向けて

時は流れ、私は今生まれ故郷の沖永良部島でツアーオペレーター/ガイドをしている。昨年の5月まで一般社団法人おきのえらぶ島観光協会の事務局長として島の観光振興に努めてきた。就任した当時は島の総入り込み数が8万人弱だったのが約10年間で9万人超えまで数を伸ばした。当時二つの町にあった観光協会の統合と法人化への実務を担当し、協会の着地型旅行会社化や収益事業の構築に日々努力した。中でも楽しかったのが着地型の旅行商品の開発である。島の中で何もしないのんびりとしたツアーを作りたい。海外生活で日本の詰め込んだ旅行がリラックスできないことがわかっていた。島内をリサーチするうちに「それ」にピッタリの木陰の素敵なビーチがあった。しかし現実は大量の漂着ごみでゲストを案内できる状態ではなかった。私はその地域の子供会に声をかけ観光協会メンバーとビーチクリーン活動を行い、そして「ビーチピクニックツアー」の販売を開始した。コンセプトは「何もしない贅沢」だ。ビーチチェアやハンモックを持ち込みゆっくりのんびり、過ごし方はさまざま。おやつを食べたり、冬は焚き火をしたり、そして予約が入るたびに事前に下見に行きビーチクリーンを行う。ツアーが終盤になるとお客さまと一緒にビーチクリーンをして帰る。そのルーティーンを構築したのだった。

何もしない贅沢

オーバーツーリズムとレスポンスツーリズム

畜産農家の取り組みを聞く参加者たち

空き家もそうだが放置されると荒れるのは早い。観光で利用されるフィールドも同じだと考えた。コロナ禍前はさまざまな場所で観光公害(オーバーツーリズム)なるものが囁かれ始めていた。大きなエリアと少し話は違うかもしれないが観光地域の住民と観光客、相互にそのフィールドをリスペクトする気持ちで使えば使うほど美しい景観が守られるようになってほしい。現在は私はしまの景勝地もさることながら人やコトにスポットを当てた「リアライゼーションツーリズム(realaization tourism)」に取り組んでいる。普段の暮らし方とは違うエリアの暮らし方を体験することで、日常では体験できない「何か」に気づいてもらい日常に帰った時に変化をゲストに与えられるようなツアーだ。企業研修や修学旅行など様々なゲストを迎え開催して好評を得ている。昨年、奄美・沖縄「世界自然遺産」の登録があった。コロナ禍の影響もあり静かな幕開けとなったが小さなエリアの観光地だからこそ、今後考えていかなければいけないコトだと思う。 【後編に続く】

投稿者プロフィール

oldie-village(古村英次郎)
oldie-village(古村英次郎)株式会社 oldie-village 代表取締役
●経歴/実績
・鹿児島県沖永良部島に生まれる
・鹿児島県立沖永良部高校卒業
・中京大学体育学部卒業
・オーストラリア、ケアンズでダイビングのインストラクターとしてGBR(グレートバリアリーフ)の水中ガイドを経て名古屋の海外旅行専門の旅行会社で旅行業に携わる
・長女の出産を機に故郷沖永良部島(おきのえらぶじま)へUターン
・島の交通や運送を司る企業での実務を経る
・島の観光協会の初代事務局長に就任
・島の二つの町(沖永良部島は2町1島・和泊町/知名町からなります)の観光協会の一元化、法人化
・地域のプラットホーム(DMO)の基礎を作る
・地方の脆弱な観光予算の中、会員の皆さまと共に情報の一元化をすべくWEBサイトの立ち上げ、運営
・自主財源を獲得すべく島の特産品の販売を事務局内の店舗で開始、ECサイトも開設し運営を開始
・観光協会の旅行業登録を推進、着地型の体験観光組成に着手
 ※気軽にできる観光体験から島のメイン産業である農業体験の開発、企業研修のコンテンツのコーディネートからガイドまで一貫して行える仕組みを組成
・地方創生やコロナ対策の交付金を行政と連携し活用、事業を構築・実施
・DMO組織構築事業やブルーツーリズム・グリーンツーリズムの構築・運営、拠点整備事業の起案やその後の指定管理業務の実施【令和元年度版地方創生関係交付金の活用事例】に掲載
・国土交通省観光庁広域周遊観光促進のための専門家登録(2021.10)
・鹿児島県知事登録旅行サービス手配業者第20号登録(2022.03)
・株式会社 oldie-villge 設立( 2022.07.01 )