豚味噌(あげみそ)をつくろう!

沖永良部島にはさまざまな郷土料理があります。

豚味噌はそのひとつ。方言で「あげみそ」と呼ばれ(祖母談)、沖永良部と言いましたが、奄美群島全体でつくられているそうです。それがこちら!

私は今、89歳の祖母と二人暮らし。ここだけの話、祖母はあんまり料理はお上手ではないのですが(!)、そこはやはりというべきか、郷土料理の豚味噌にかけてはなかなかの腕前。祖母の話から察するに、これについてはきちんと人から学んだのだと思います

そんな祖母の御姿はこちら、買い物帰りの様子(昔の島人はこんな感じで物を運んでいた)。90前の足腰と体幹とは思えません。これだけ見るとちょっとした拳法家です。

ある日、島外に住む親戚から「おばちゃん(祖母)が送ってくれる豚味噌は子どもたちにも評判がよいが、母はつくれない。作り方を教えてほしい」とメッセージを届きました。

祖母の話によると、豚味噌は正月などのお祝いごとや葬式などでつくられるそうで、ある日思い立ってつくるということは基本的にありません。でも、郷土料理をつくる家庭が減る中、豚味噌の作り方をこうしてインターネットで記録しておくことは、親戚はもちろんのこと、自分のため、また奄美群島に関わる誰かのためにもなるかもな~と思いました。

水嶋「つくって」
祖母「なんでや」
水嶋「写真撮って、それ親戚に送るから」
祖母「え~~~~~~~~~、分かった」

面倒くさがりながらも調理に取り掛かる祖母。ありがとう。

あと、撮影にあたり台所の清掃を忘れたので、全体的に薄目で読んでください

豚味噌に必要な食材

・奄美味噌 :1kg
・三温糖  :800g~1kg
・落花生  :2合
・玉子   :10個
・豚(三枚肉か肩ロース)または鶏胸肉: 1kg

これらの食材、どれが欠けても豚味噌はつくれませんが、中でも最重要かつ代替が効かないものが「奄美味噌」です。「つぶみそ」「茶うけみそ」とも呼ばれます。

名前からお察しの通り、奄美群島で売られている味噌なのですが、パッケージには「豚みそに」と明記されているあたり、豚味噌前提の食材の様子。そしてこうして写真を撮って初めて気づいたのですが、「とんこつ」とは何なのか。奄美にとんこつラーメンをつくる習慣があると聞いたことはない。

豚の軟骨をトロトロになるまで煮込む郷土料理があるので、それのことを言っているのかもしれません。逆に、地域でとんこつ=とんこつラーメンのイメージがないからこそ、郷土料理側のイメージで通っていると言えるかもしれませんね。正解をご存知の方はお教えください。返事はするかもしれないし、しないかもしれません。

あと、分量はアバウトです。祖母自身がいつも目分量でつくっているためこうなりました。落花生(島では「らっかしょう」と呼ぶ)に至っては、たまたま軽量したものがお米のカップだったので「2合」という表現になっています。うちの祖母は何かと適当です。

レシピはこんな感じ!

①:落花生を炒てミキサーで砕く
②:豚を下茹でして細切れにする
③:生姜ひと切れをすりおろす
④:奄美味噌に玉子と三温糖をぶちこんで混ぜる
⑤:④を鉄のフライパンで炒めて水気をとる
⑥:④に①②③を入れて混ぜて…完成!

さぁ、つくっていきましょう!(祖母が)

調理①:落花生を炒ってミキサーで砕く

水嶋「まず何するの?」
祖母「落花生をい…い…方言で『いーちゅん』っちゅうんや」
水嶋「あぁ、炒るってことね」
祖母「いーちゅんや」
水嶋「標準語では『炒る』ね」
祖母「いーちゅんやて」
水嶋「うん、だから…もうええわ」

水嶋「どれだけ炒るの?」
祖母「なんちゅうか…適当や」

適当だそうです。

見た感じところどころ黒くなってましたが、皮が焦げ付く分には問題なさそう。

ボウルに入れてざっざっと揺らします、これで余計な皮が落ちるらしい。

祖母「皮はちょっとだけ取るんや」
水嶋「へー、残すんやな」
祖母「栄養あるからな」
水嶋「昔の人の知恵か」
祖母「いや、テレビが教えてくれた
水嶋「テレビか~い

ミキサーで粗く砕きます。

かなり残ってますが、このアンバランスさが(食感的に?)良いそうです。

調理②:豚を下茹でして細切れにする

①と同時進行でよいのですが、豚肉を茹でます。

祖母「三枚肉がええんやけどな」
水嶋「いや、お祖母ちゃんロース肉って言ったよね?」
祖母「そうやったか」
水嶋「そうですよ」
祖母「三枚肉の方が安い」
水嶋「どっちでもええ、と」

シッカリと火が通ったら、1cm四方くらいのこま切れにします。

ちょっと火の通りが甘かったのでしゃあなしに炒めました。

調理③:生姜ひと切れをすりおろす

生姜ひと切れをすりおろします。

が、すりおろし器がなかったのでしゃあなしに千切りに。

すりおろし…ではありませんが、老体に鞭打って調理してもらっているので言いません。

調理④:奄美味噌に玉子と三温糖をぶちこんで混ぜる

これで下準備はほぼ終わり。ベースとなる味噌をつくります。奄美味噌1kg、玉子10個、三温糖800g~1kg(お好みで)を、大鍋にガンガンぶちこんでいきましょう。

冒頭で祖母は料理がお上手ではないと書いたのですが、謎にポテサラは美味しいんですよね。豚味噌も同様にという点で、たぶん、ぐちゃぐちゃにしてつくる料理が上手いのだと思います。すみません、今のはさすがに言葉が悪かった。マッシュ系の料理が上手い。

こんな感じになったよ!

調理⑤:④を中火で温めて水気をとる

そうして混ぜに混ぜた④を、鉄のフライパンに入れて温めます。

祖母「これはね、鉄じゃないとあかんのよ」
水嶋「なんで?」
祖母「そう教えられた」
水嶋「なんで鉄じゃないとあかんのやろ?」
祖母「知らん」
水嶋「じゃあ、どれくらい温めるの?」
祖母「数えたことない」
水嶋「も~」

鉄じゃなくてもワンチャンいけるかもしれません(責任は持ちません)。そもそも、祖母が教わった時代にステンレス製のフライパンなどはないから比較もできない。

調理⑥:④に①②③を入れて混ぜて…完成!

数えたところ中火で25分、量が量なので時間がかかりました。

最初はデロデロの味噌が、もったりするのが合図。たとえるなら「カフェ・ハイチのドライカレーくらいのもったり感」…と言いたかったのですが、東京にしかない上に私も実は一度しか行ったことがないので、みなさん各々の「もったり感」を目指せばよいです。

あと、余裕ぶっこくと焦げ付くので、25分間はコンロの前から離れない方がよいです。

あとは、①の落花生、②の豚肉、③の生姜をぶちこんで、混ぜたら完成。

完成~~!!

見た目にあまりおいしそうな料理ではないのですが、安心してください。おいしいです。でも、食べ慣れない人には真っ先に「甘っ!」という感覚が全身を突き抜けると思います。そう、奄美は甘いものが多いのです。言葉遊びじゃなくてね。

ご飯のおともにどうぞ!

レシピ公開しておいてなんですが砂糖はマジお好みで

で。

郷土料理だと冒頭に書いたし、郷土料理のつもりで作り方を聞いていたのですが、ここで祖母から爆弾発言。「大人になってから初めて教わった」「それまで島で見たこともなかった」そうです。おいおい、孫にここまで書かせておいてどういうことや~??

ただ、沖永良部島も字(集落)によって文化が違いますし、何より祖母の腕と性格から察するに、つくる必要に迫られるまであまり料理に興味がなかった&その自覚もなかったと思うので、「単に祖母が知らなかっただけ」だと孫としては推察しております。

今回は豚肉を使いましたが、お年寄りが食べやすいため、より柔らかい鶏肉(ささみと言ってたのでたぶん鶏胸肉)を使うこともあるとのこと。

目分量ばかりの正確性に欠いたレシピですが、今回の情報をベースに、みなさんそれぞれの豚味噌づくりにトライしていただければ幸いです。奄美味噌は奄美群島でないと入手しづらいですが、本土の方におかれましてはネットショップで買えるのでぜひに。

というか、農林水産省がレシピ公開してました

って、奄美味噌に対して砂糖の量が1/6~1/3なんだけど!?奄美味噌と砂糖が同量っていうのはやっぱ甘すぎるんじゃない!?祖母の好み?記憶違い?えらぶの文化?それとも幻?私は誰?あなたは誰?分からん!俺はもう寝る!おやすみ!

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文章・写真:ネルソン水嶋(えらぶカレンダー運営者)

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