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沖永良部島の畜産農家を取材しました

鹿児島市から南へ約552kmの場所に位置している、隆起サンゴ礁の島である沖永良部島。平坦地が多く、農耕地に恵まれているので、農業が盛んな島です。主な農作物は、「じゃがいも」や「サトウキビ」、そして南国フルーツです。他にも、黒毛和牛の子どもを育てている「繁殖農家」もいます。

ライターである上村の高校のクラスメート清村さんが、沖永良部島で繁殖農家をしているので、話を聞きに行きました。実は、わたし沖永良部に、初上陸でした。

沖永良部島では「繁殖農家」が主流

畜産農家は、母牛から生まれた子牛を出荷するまで育てる「繁殖農家」と、子牛を成長させて肉牛として出荷する役割を担う「肥育農家」に分かれます。繁殖農家は、母牛に子牛を産ませ、おおよそ8〜9か月育てたのち、競り市に出荷します。9ヶ月ほど育てられた子牛は、肥育農家に引き継がれ、18~22か月間ほど育てられたのち出荷されます。

沖永良部島の畜産農家のほとんどが、「繁殖農家」です。その背景には、「島ならではの事情」があります。実は、沖永良部島には屠畜(とちく)施設がありません。そのため、肥育された牛を島外に運ぶ必要があり、その輸送には大きなコストがかかってしまいます。こうした事情から、繁殖に力を入れる農家が多くなっています。

母牛
子牛

清村さんは、早期母子分離と人工哺乳という方法で子牛を育てています。産まれた子牛を数日で母牛から離し、人の手で代用乳を与えて育てる方法です。この方法をとることで、母牛の分娩間隔を短く保ちやすくなり、子牛がより均一に育ちやすくなるというメリットがあるそうです。

グルメな牛のための牧草づくり

元気な子牛を育てるには、日々のエサがとても大切。生後10週程度は代用乳を与え、その後は、濃厚飼料や粗飼料に切り替えていきます。濃厚飼料とは、とうもろこしや大豆、麦、糠などを粉末状にしたものです。牛の飼料添加物に、「モネンシン」という抗生物質があります。牛の成長促進に高い効果があると言われています。しかし、清村さんは「モネンシン」をあえて使わないで、牛を育てるというこだわりを持っています。

また、粗飼料とは、牛の主食で、牧草や乾草(牧草を乾かしたもの)です。清村さんは、自分たちの手で牛が食べる牧草を育てています。5月の初めに牧草の種をまき、6月末〜7月初旬に1回目の刈り取り。その後、9月末までに合計3回牧草の刈り取りをします。

しかし、質の良い牧草づくりには天候との駆け引きが欠かせません。牧草を刈り取ったあとに、乾かしてから牧草ロールに成形し、大きなラップで包みます。牧草を刈ったあとに雨が降ってしまうと、栄養価が低くなったり、持ちが悪くなってしまうそう。また、長雨が続くと、草ばかりが伸びて芯が固くなり、栄養価が低下してしまいます。実は、牛はとてもグルメ。少しでも食感や味が悪いと、口にしてくれないそうですよ。

こちらの牧草が美味しいみたい

実は、清村さんはジャガイモも育てています。9月末の牧草収穫が終わると、畑には堆肥を敷き込み、10月末からはジャガイモの植え付けがスタート。2月から4月まではジャガイモの収穫期。その後また牧草へと畑が切り替わっていきます。

こうした循環の中で、土はどんどん元気になり、牛たちのエサも安定して育てられています。人と牛、そして自然がゆるやかにつながる営みが、沖永良部島の畜産の現場にはありました。

沖永良部島では、畜産農家の数は年々少なくなってきているといいます。そんな中でも、清村さんは「これから、牛の頭数を少しずつ増やしていきたい」と前向きに語ってくれました。

日本一に輝いた「鹿児島黒牛」は、日々牛と向き合い、命をつなぐ人たちがいるからこそ守られています。この島で、地道に、丁寧に牛を育てる清村さんの挑戦を、これからも応援していきたいと思います。

投稿者プロフィール

上村 ゆい

ヨガインストラクター×ライター。どちらかというと身体が硬めのヨガインストラクターです。その人に合ったレッスン内容を心がけているので、老若男女問わずレッスンを受けていただいています。ヨガレッスンは、出張ヨガがメイン。趣味は、美味しいものを食べること。ライターとして鹿児島のいろいろなことをを発信していけたらと思います。

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