さつま忍者研究会代表の清永です。
 私は2014年から約3年間。KADOKAWA Walker plus 鹿児島県地域編集長として、鹿児島の情報を全国向けに配信させていただいた時期があったのですが、そのお仕事の縁もあり、当時鹿児島県内でも有名アニメキャラクターを使ってPRしないか?と観光系の方々にお話しをしたのですが、ことごとくNGを出されました。
 それから約10年。やっと最近になってキャラクターやゲームといったポップカルチャーをPRに使う動きが全国レベルとまではいきませんが、ようやく追い付いてきた様に感じます。

 今回は KADOKAWA Walker plus のお仕事をきっかけに、未だお付き合いのある、ファミ通.com初代編集長 田原誠司さんに鹿児島におけるゲーム制作についてお話をいただきました。(以下寄稿文)

全国でも稀有な官製乙女ゲーム『うたた往時のなつかしや』

 鹿児島に住む友人が『うたた往時のなつかしや』の存在を教えてくれました。
 私は雑誌、書籍、ネットといった形でコンピューターゲームに長く携わってきましたが、このアプリのことはノーマークでした。
 『うたなつ』はゲームのジャンルとしては乙女ゲーム(歴史恋愛シミュレーション)に分類されるでしょう。個人的にその手のゲームにはあまり興味がないのですが、この作品をプロデュースしたのが「鹿児島県」だと聞いて身を乗り出しました。
 この作品は官製・県製ゲームと言える珍しい作品です。ダウンロードしたアプリを起動すると、まずお決まりの注意事項が表示され、そこから画面が切り替わるとゲームタイトルよりも先に鹿児島県のシンボルマークが現れるのです。
 これ、すごいことだと思います。ちょっと見たことのないパターンです。
 自治体の主導で製作されたアプリはこれまでに数多くありました。しかし、そのほとんどの内容は災害対策・健康管理や増進・観光地の紹介でした。ゲーム的な要素を付加したものでも「地域に関するクイズ」や「地形を使ったパズル」のような、安全でありきたりなものがほとんどでした。
 例外的に、佐賀県がスクウェア・エニックスのゲーム『ロマンシングSaGa』とイベントレベルでコラボレートしたり、ゲームアプリ『天倫の桜』を千葉県佐倉市が公認してPRや企画に協力した事例がありますが、「県主導で作成された本格的ゲームアプリ」は『うたなつ』が初ではないでしょうか。

 ここからはゲームをプレイしてみての個人的な感想になりますが、一言で表すなら「程が良い」。
 県(正確には「鹿児島県地域振興局)が主導・監修すると内容がどうしても保守的でお堅いものになりそうなところ、本作は公序良俗に反さない範囲でそれなりに「攻めた」内容だと感じました。「叱られない範囲でやっちゃえ」的ないたずら心が感じられました。アプリの製作自体は企画の競争入札を勝ち抜いた「アプリファクトリーはるni株式会社」によるそうですが、鹿児島県サイドからの要求を満たしつつ「ゲームらしさ」を損なうことなくアプリ完成までの期間を走り抜いたのだろうと感じさせてくれました。
 鹿児島県のことを知りたい人にとっては乙女ゲームの入口となり、乙女ゲームで遊びたい人には鹿児島を知るきっかけとなる。良い意味で目的と手段が交差する、新しい取り組み方だと感じました。

【 田原誠司 】
フリーライター・編集者。
著書『1989年のファミコン通信』。
  鹿児島には小学生だった半世紀前に一度行っただけで、恥ずかしながら妙円寺詣りについてはこのゲームで初めて知りました。

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投稿者プロフィール

清永秀樹
清永秀樹
クリエイティブパフォーマンスBAN/代表
さつま忍者研究会/代表
H26~H29 KADOKAWA Walker plus 鹿児島県地域編集長(最終役職)