前回の投稿では、この作品の生い立ちについて、長々とお付き合い頂きました。あれから2か月。キャストも決定し、稽古もいよいよ本格化してきた今日この頃。今回から、いよいよ、作品に取り組む子供たちの奮闘ぶりの一端をお伝えして参りたいと思います。

 今年度の第1回の稽古は、4月最初の週末。演出家の太郎さんを迎えての集中稽古でした。その際「オーディション」と称して、子供達に一人ずつ舞台に立って、太郎さんや仲間が見守る中、思い思いの自己アピールをしてもらいました。

オーディション風景

想像してみてください。仲間が見守る中、たった一人で舞台の中央に立つ。それだけでもどれだけ勇気のいる事か。ダンスをする子、歌を歌う子、何日もかけて考えた一芸を披露する子。堂々と自分をアピールできる子もいれば、舞台に立つと考えただけで泣き出してしまう子もいました。「大丈夫だよ!できるよ!」みんなに励まされて、やっと舞台に立って、泣きながら、昨日まで何度も練習してきたスピーチを披露し始めた途端、客席の仲間からもらった拍手に笑顔が戻り、そこからはみんなも驚くくらい、素敵なミニステージを披露してくれた小学4年生もいました。

 ひとりひとりのオーディションを、何も言わず、じっと見つめていた太郎さん。でも、オーディションで求められるダンスの実力、歌唱力、表現力などは、あくまでキャストを決めるための沢山の材料のなかのひとつでしかありません。日常の練習の中での態度や、休憩時間の何気ない友達との関わり方…それら数えきれない数万の要素を組み合わせ、それを作品のイメージに重ね合わせながら、太郎さんが何日もかけてキャストを作っていきます。考えに考え抜いて決めたキャスト。その決定過程は、発表の日まで誰にも伝えられません。そして、その日を、みんなソワソワドキドキしながら待っていました。

 5月、太郎さんの集中稽古の2日目。子供たちが待ちに待ったキャストが発表されました。一番驚いたのは、実は、いつも誰よりも長い時間子供たちと接していたはずの私だったかもしれません。私が内心予想していたキャストの組み合わせは9割外れていました。今年の春から仲間に加わったばかりの新人の大抜擢。小学生メンバーからの準主役に選ばれた子もいます。これまで同じ役を演じ続けてきた子を、あえて色合いの違ういぶし銀のようなわき役に配置したり、かと思うと、前回公演と全く同じ配役の子もいたり。それはそれで、この3年間、心も身体も成長した子供たちが、3年前と同じ役をどう進化させてくれるのかも楽しみです。何より、キャストの発表を聞いた時の子供たちの反応にも驚かされました。メインキャストに選ばれた子は、その役を演じる事の重圧、選ばれなかった子たちは、落胆する気持ちももちろんあったはずです。けれど、私が感じたのは、それぞれの子たちの覚悟のようなものでした。たとえ誰がどんな役を演じる事になったとしても、一人一人が作品をより良いものに作り上げるんだという決意。みんなの表情が引き締まり、瞳の輝きが増したように感じたのは、私の気のせいばかりではないのではないでしょうか。

 そして、いよいよ、5月の後半からは、台本を持っての練習がスタートしています。ダンスの練習だけの時期とは全く違う緊張感。最初は、まるでお守りのように台本を握りしめ、台本を棒読みしていたメンバーもみかけられましたが、徐々に徐々にセリフを覚え、台本はあくまで台詞確認と、演出家の指示を書き留めておくためのノートと、役割が変わってきつつあります。

3時間に及ぶ大作。太郎さん一人ではとても練習は回しきれません。今年から演出助手として、太郎さんと交互に来島してみんなの稽古をサポートしてくれているのは、現在鹿児島在住、2018年、2019年公演でアイザック役を務めてくれた和泊町出身の前田君21歳。(彼についても、いろいろとご紹介したいドラマが山ほどあるのですが…またそれについては、追々ご紹介させて頂きますね。)彼が参加してくれる練習の際には、必ず始める気合入れの動画をご紹介して、今回の記事を終わらせていただきますね。

練習前の気合入れ 越山研修センターにて

【追記&お知らせ】
現在知名町商工会青年部がKTS鹿児島テレビのバックアップのもと「島の子どもたちと盛り上げる花火大会を開催したい」プロジェクトが進行中。プロジェクト実現の為のクラウドファンディングが行われています。私たち島民創作ミュージカル「えらぶ百合物語」も、このプロジェクトに参加しています。
 今年の知名町夏祭りの花火大会には、花火と子供たちのダンスパフォーマンスとのコラボも企画されています。ぜひ多くの皆様のご支援をよろしくお願いいたします。
島の子どもたちと盛り上げる花火大会を開催したい プロジェクトサイト

投稿者プロフィール

長野久美
長野久美沖永良部在住 パソコン関連自営業
奄美群島南部、沖永良部島に主人と二人で移り住んだのは1999年の夏でした。以来、島でパソコンの何でも屋を営んでおります。現在仕事そっちのけでどっぷりとはまっているのが、島民創作ミュージカル「えらぶ百合物語」の運営のお仕事。この活動を紹介しつつ、時々沖永良部の情報もお伝えしていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。