昨年は日本ではじめて鉄道が開通して150年の節目の年となり、今年は国分(現隼人駅)~人吉間が明治36年に開通してから120周年を迎えます。今回は日本の鉄道の生い立ちと南九州(肥薩線を中心に)の鉄道の歴史について、2回シリーズで紹介したいと思います。

            大隅横川駅(築120年を迎える)

1 鉄道の歴史

世界で最初の蒸気機関による鉄道は、江戸時代後期の文政(ぶんせい)8年(1825)のイギリスで、ストックトン~ダーリントン間の約40 kmとされており、炭鉱で産出した石炭を運搬するのが主な目的でした。本格的な客貨両用鉄道は1830年から始まりました。

それまで物資の輸送は、馬車や人手によって行われていましたが、蒸気機関車の発明は多量の物資や人々を運ぶ「交通革命」となり、蒸気機関のさまざまな運用で工場の機械化が進み、イギリスを中心とした欧米諸国は重工業化、すなわち「産業革命」を生み出しました。

2 日本の鉄道の歴史

日本における鉄道の歴史は、慶応(けいおう)3年(1867)に江戸幕府がアメリカに対し、江戸~横浜間の鉄道設営(経営権を含む)を許可しましたが、明治政府となってアメリカの内政への影響力を懸念・考慮して、幕府の認可は無効にしました。

その後、明治2年(1869)に自国で運営する方式で新橋~横浜間の鉄道建設を決定し、建設に関する技術協力や資金を援助する国としてイギリスを選定しました。選定理由は次のようなことが考えられます。

① 鉄道発祥の国で技術力や運営方法の評価が高かった
② 海外での実績が豊富であった
③ イギリスの地形が日本に酷似していた
④ 鉄道の運営等について良心的且つ建設的な提言であった
⑤ 日本に友好的な駐日公使ハリー・パークスの存在

3 日本の鉄道の発展

日本における鉄道の歴史は、明治5年10月、新橋駅~横浜駅間の開業で始まります。開業当初は大評判となり、大勢の人々が集まり、1日あたりの利用者は4,000人を越えました。年収は旅客・貨物を合わせて44万円となり、経費の23万円を引くと21万円の大幅な利益を計上しました。明治5年の日本国の歳出予算は6,268万円なので、その利益の大きさが伺えます。ちなみに、明治初期の1円の価値は現在の2万円相当になるので、42億円の黒字となります。

当時、明治政府は西欧列強国からの植民地化を防ぐために「富国(ふこく)強兵(きょうへい)殖産(しょくさん)興業(こうぎょう)」を(かか)げていました。そのため、人々の移動や物資の輸送、さらには軍事物資等の運搬を速やかに行うための海運並びに鉄道の整備は急務でありました。

本来、海外での車両の幅(軌間(きかん))は1,435㍉で現在でも国際基準軌間となっていますが、日本では1,067㍉を採用しました。これは、次のような理由が考えられます。

① 土地の確保が少なくてすむ
② 土地代・材料費・建設費の経費削減となる
③ 建設期間の短縮に繋がる
④ 防衛上、内陸(山間部)を通る路線とした
⑤ 日本は土地が狭くカーブやトンネルが多い
⑥ 軌間が広いとカーブを大きくする必要がある

国の基幹事業である鉄道の整備は、本来でしたら政府が行わなければいけないのですが、明治政府が発足して間もないこと、明治10年に勃発(ぼっぱつ)した「西南の役」による財政負担などによって公費の確保は厳しい状況となりました。そこで、明治14年に半官半民の日本鉄道が設立し、その後も地方を中心に北海道炭礦(たんこう)鉄道、関西鉄道、山陽鉄道、九州鉄道などが設立していきました。

4 日本鉄道の営業距離

日本の鉄道は、明治5年の開業から急ピッチで線路を延ばしていきました。明治14には半官半民の会社を設立し、明治25年には民間を参入させて鉄道網は全国に広がり、明治37年に起きた日露戦争では兵員や軍事物資の運搬に大きく貢献しました。一方、1890年代の後半に起きた経済不況により、民間の経営が困難となり、明治39年(1906)に鉄道国有法の公布し、地方は国家が、都市部は民間が整備するようになり、大正元年(1912)には1万㌔を超えました。

その後、鉄道は日本の高度成長を支える基幹インフラとなりましたが、高速道路網の整備や地方の人口の減少などによって、利用者は減り赤字路線が増え、昭和58年には赤字路線の廃止、昭和62年には国鉄の分割民営化(JR)など、日本の鉄道は大きく様変わりしました。

 西暦国有鉄道私有鉄道合 計備 考
明治 5年187229.0 29.0 
明治15年1882274.9101.4376.3 
明治25年1892983.52,124.43,107.9民間参入の増加
明治35年19022,071.54,843.16,914.6 
明治40年19077,153.2717.37,870.5私鉄の国有化
大正元年19128,391.93,029.211,421.1 
昭和22年194719,902.67,421.127,323.7 
昭和37年196220,516.37,387.227,903.5 
昭和47年197220,924.25,877.626,801.8 
昭和58年198321,319.25,591.326,910.5赤字路線の廃止
平成30年201820,017.17,773.427,790.5※国鉄→JR
日本鉄道の営業距離の変遷

次回は、鹿児島線(現肥薩線)について紹介します。

              文責:鈴木     写真撮影:霧島市・鈴木

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suzuki
霧島市に在住しています。
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